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「イントゥ・ザ・ワイルド (Into the Wild)」の感想。何故こんなに心に刺さるのか?

「イントゥ・ザ・ワイルド (Into the Wild)」の感想。何故こんなに心に刺さるのか?

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自分が23歳10ヵ月の時に「イントゥ・ザ・ワイルド (Into the Wild)」を観た。
イントゥ・ザ・ワイルドは、主人公「クリス」が22歳で大学卒業後に旅に出て、24歳で死ぬまでの旅を描いた物語である。

自分と全くの同世代ということに加え、当時僕が「一人で生き抜く」という事に心から憧れていたこともあり、僕はクリスの行動にえらく感情移入した。

いや、もしかしたら「一人で生き抜く」という憧れは、イントゥ・ザ・ワイルドを観てから本格的に生まれた感情かもしれない。
それくらい僕はミーハーだ。

ミーハーだが、原作の「荒野へ(ジョン・クラカワー)」もちゃんと読んだので、そこは評価してほしい。

※当記事は
「イントゥ・ザ・ワイルド 感想」
「イントゥ・ザ・ワイルド 一人」
「イントゥ・ザ・ワイルド クリス」
などのワードで検索される方におすすめです。

※ちなみにイントゥ・ザ・ワイルドの日本版トレーラーは、
「そして僕は歩いていく。まだ見ぬ自分と出会うために。」
「自分をぶっ壊す旅」
「人生はいったい誰のものなんだ?」
「僕の人生を取り戻そう。少しだけ、勇気を出して。」
とか薄っぺらいナレーション、キャプションが出てきますが、この作品は断じてそういう系統のもんではありませんので、トレイラー見て興味をなくされた方は、是非本作を鑑賞してみてください。ビックリするはずです。

イントゥ・ザ・ワイルドのあらすじ

大学を優秀な成績で卒業したクリス(エミール・ハーシュ)は車や財布を捨て、自由を手に入れるための放浪の旅に出る。労働とヒッチハイクを繰り返し、アメリカからアラスカへと北上。アラスカ山脈の人気のない荒野へと分け入り、捨てられたバスの車体を拠点にそこでの生活をはじめる。

引用:解説・あらすじ – イントゥ・ザ・ワイルド – 作品 – Yahoo!映画

当時の僕は人里離れた土地での自給自足生活に憧れていたため、「サバイバル」や「ロードムービー」の要素が含まれた映画がとにかく染み込む体質だった。

本作はそのどちらの要素も含まれているどころか、それぞれが軸になっている。

アラスカに着いてからのサバイバルライフと、それまでの旅の時間軸が入り乱れる作風だ。

クリスはなぜ過酷で無謀な旅に出たのか?

若者が主人公のロードムービー映画はたいてい出会う人々に刺激を受け、最終的に主人公が成長するという流れになることが多い。
しかし、イントゥ・ザ・ワイルドの主人公「クリス」は、頭脳明晰で自分の哲学をしっかり持っているため、むしろ、出会う大人たちの方に影響を与えていく。

ワシントンDC郊外の高級住宅地で育ち、学業のほうも優秀であり、スポーツマンとしてもエリートだったようである。一九九〇年夏にエモリー大学を優等(ハーバード大学のロースクールに入れる程度)で卒業し、その直後に姿を消した。

引用:クリストファー・ジョンソン・マッカンドレス(アレグザンダー・スーパートランプ) – Jinkawiki

上記のようにクリスは秀才だ。
その為、他者から影響を受けることはほとんどなく、他者に影響を与えながら旅を続けている。

しかも好んで哲学家の本を読み漁っており、「アラスカの荒野でのサバイバル」も、恐らく哲学家の思想に影響されたからだと思われる。

クリスは、
・ヘンリーデイビットソロー
・トルストイ
などの哲学家、思想家を好んでいる。

トルストイの名言についていくつか調べてみたが、「幸福・人生・自分」についての名言が多い。

以下は、トルストイの名言のいくつかをピックアップしたものである。

逆境が
人格を作る。

学問のある人とは、
本を読んで多くのことを知っている人である。
教養のある人とは、
その時代に最も広がっている知識やマナーを
すっかり心得ている人である。
そして有徳の人とは、
自分の人生の意義を理解している人である。

何の試練も受けていない者は、
試練を受けている人に、
何も教えることはできません。

幸福は、己れ自ら作るものであって、
それ以外の幸福はない。

孤独なとき、
人間はまことの自分自身を感じる。

死への準備をするということは、
良い人生を送るということである。
良い人生ほど、死への恐怖は少なく、
安らかな死を迎える。
崇高なる行いをやり抜いた人には、
もはや死は無いのである。

人生の意義を
探し求めようとしない者がいるならば、
その人間は生きながら死んでいるのだ。

死ぬとき
人間はひとりである。

引用:トルストイの名言・格言集。人類愛を説いた文豪の言葉 | 癒しツアー

赤字は、本作でのクリスの行動に纏(まつ)わるものであるが、クリスが実際に読んだ一文なのか、そして影響を受けたのか等は定かではない。飽くまで僕が「クリスに影響を及ぼした」と思ったものだ。

クリスは「幸福とは何か」を突き詰めて、そして無謀な旅に出た。

旅の途中でお金を燃やし、車を捨て、所持品を必要最低限だけにした。
アラスカに着いてからは、地図を捨てるという暴挙にも出ている。

この行動には一部の専門家も「彼は死んで当然だった。それくらい愚かな行為だ」と言っているが、むしろこの事から、クリスが死を覚悟していたという事は想像に容易い。

ある登山家のブログでもイントゥ・ザ・ワイルドが紹介されており、以下のような一文があった。

”困難な登山を誰の力も借りずに成功させた時、私はとても嬉しかった。しかし、保温性に優れた衣服や、軽くて頑丈な靴、GPSなどの存在を考えると、「私は本当に一人の力で達成したのだろうか?」と深く疑問に思った。”

クリスもこの登山家のように「一人で成し遂げたい」という思いがあった。
そしてそれは、他の誰よりも強いものだったに違いない。

だからこそ、”アラスカの荒野で地図を捨てる”という暴挙に出たのだ。

長くなったが、「クリスがなぜ過酷な旅に出たのか?」の答えは、「一人で本物のサバイバル生活を送り、そこで感じる幸福の正体を知りたい」というようなものではないだろうか。

もちろん、これ以外にも動機はいくつもあると思う。
いくつもある中で一番強いと思われる動機をピックアップしただけだ。

今更だが、僕のような浅い人間が、クリスのような深い人間のことを考察して良いのだろうかと少し申し訳なくなった。しかし、僕がクリスに対する思いは決してミーハーなものでは無いはずなので、勇気を持ってこのまま続ける。

「イントゥ・ザ・ワイルド」はなぜここまで我々を魅了するのか?

見終えた後にここまで喪失感を感じる映画はそうそう無い。
「喪失感」という言葉を使ったが、イントゥ・ザ・ワイルドはただのバッドエンドでもない。
捉え方によってはハッピーエンド・・・にはならないかもしれないが、「主人公が死んだからバッドエンド」のような軽いものでは断じて無い。

やはり我々男というのは、クリスのようなサバイバルライフに多少の憧れがある。
(僕の場合は”多少”どころでは無いのだが、本物のサバイバルを実施しているわけでは無いので結局は同じである)

そしてクリスは旅を通して、出会う人々に影響を与えていく。
特にクリスの両親と同じ世代のヒッピー夫婦「ジャン・レイニー夫妻」から見ると、家出(失踪?うろ憶え)した自分達の息子とクリスに重なる部分があるようで、クリスのことをとても心配している。

「親御さんは、あなたが旅に出ていることを知っているの?」

この問いに対しクリスは少しうざったそうに受け答えをするが、追い打ちをかけるようにジャンが攻める。

「自分の子供が、(失踪して)今どこで何をしているか分からないということ程、親にとって辛いものはないわ。」

この言葉は、一人暮らしをしている僕にも重くのしかかるものがあった。

本題に戻るが、クリスは旅の道中であらゆる人々に影響を与えていた。
その中で我々鑑賞者は、むしろ「クリスに影響を与えられる側」の立場だったように思える。
当然、監督のショーンペンは意図的にそういう撮り方をしていたと思うが、実際、クリスの(思想家から引用する)発言はどれも小難しく理解できないことも多かった。

だから僕はクリスを「憧れの人」と捉え、どちらかと言うと「クリスに出会う人々」の方に感情移入していたような気がする。
ただ初見の時はここまで重い映画とは知らず、「こんなキレイな夜景を見ながらたき火できるなんていいな」「一人で生きていくってかっこいいな」「僕もしてみたいな」という浅い考えでただただウットリしながら観たので、積極的にクリスを自分に置き換えて鑑賞していたとは思う。

またしても長くなったが、「イントゥ・ザ・ワイルドが我々を魅了する理由」
そして、「鑑賞後に感じる喪失感」の正体は、「クリスに対する憧れと、クリスから受けた影響」ではないかと思っている。

「イントゥ・ザ・ワイルド」は、”一人で生き抜くな”と言っている

本作では、とにかくクリスがかっこよく映っている。
というのも、映像がとにかくキレイなのだ。

前回に「内省」の記事でも書いたが、僕にも「本当に美しい景色は一人で見たい」という欲求がある。

最高にキレイな景色とクリスの後姿が映るシーンは、どれも完璧で美しい。
そしてただただかっこいい。
「かっこいい」という言葉で表すとミーハーになってしまうのは理解しているが、僕の素直な感想では「かっこいい」以外に形容しようが無い。

ただ、その数秒の映像だけで「クリスが心から人生を楽しんでいる」ということが伝わり、目頭が熱くなってしまう。

正直僕も、”行ってはいけなそうなところ”に立ち入って、そこからの美しい景色に心を奪われるという経験はある・・・。
もちろん、クリスの旅に比べるとスケールが小さい話だが、精神年齢の低い男というのは、危険を冒し、その先にある美しいものにものすごく惹かれる。(クリスの精神年齢については後述)

・旅で得たスリルや疲労感
・誰にも邪魔されずに一人で満喫できるという解放感

イントゥ・ザ・ワイルドの鑑賞後、この2点から「僕も危険な旅に出てみたい!」と強く思った。

実際にそう思う鑑賞者は多いと思う。クリスが死んでいなければ・・・。

意外にクリスは子供っぽい性格?

映画版では比較的クリス視点で物語が進むのに対し、原作の「荒野へ」は、作者のジョン・クラカワーが、実際にクリスと出会った人々に行ったインタビューを元に構成されている。

その為クリスの目的は全て、作者や取材された人の推測ということである。

映画で、クリスのことを心配している描写が多かったヒッピー夫婦のお母さんの方、「ジャン」は、原作のインタビューでは「クリスには腹を立てることもあった」と応えている。

その他も何人か、「クリスは良い奴だけど、腹を立てることもあった」みたいな事を言っていた。

映画でのクリスは、かなり賢人的で半ば「アイドル」のように人々を魅了していたが、実際はちゃんと人間味を帯びた憎たらしさもある性格だったらしい。

また、ジャンに対して送った手紙もかなり子供っぽいものだった。

うろ憶えだが、以下のような内容だった。

”ジャンへ。〇〇へは深夜列車で行ったよ。お金が無いから走行中の貨物列車にこっそり乗り込んだんだ。でも〇〇辺りで見つかって無理やり下ろされたんだ。でもその後僕はまたこっそり列車に乗り込んだけどね!”

なんというか、この「怒られたけど全然反省していないね!」みたいな考えを持っているところもそうだし、それをわざわざジャンにアピールしてることがかなり子供っぽい。

これは無邪気とかそういうのではなく、ただ”未熟な部分”に見える。
映画では伝わらない、クリスのリアルな一面が垣間見える手紙だと思った。

「イントゥ・ザ・ワイルド (Into the Wild)」の感想。何故こんなに心に刺さるのか? – まとめ

クリスが死んだのは1990年である。
僕の生まれ年も1990年だ。

そして映画を通して僕がクリスと出会ったのが24歳。
クリスが死んだ時と同じ年齢だ。

それだけでも相当感情移入できるのだが、更に言うと僕が「一人暮らし」を始めてから出会えた映画で良かった。
イントゥ・ザ・ワイルドは、「一人」の境遇の時に観るかどうかで感じ方が大きく変わる映画だと思う。

クリスは「一人で生き抜く」という経験を通し、最期にこう残している。

Happiness only real when shared.
幸福が現実となるのは、それを誰かと分ちあったときだ。

字が震えていたので、事故で毒草を食べ飢餓に陥った後に書いたと思われる。

この一文から察するに、クリスは一人で生き抜き、「やっぱり家族に会いたい」と思いながら死んだ。
展開だけで言えばベターなのだが、いかんせん実話なので生々しい。

ちなみに、クリスがアラスカの荒野で過ごした「マジックバス」は、Googleマップでも確認できる。

このMagic busでクリスはサバイバルし、そして死んだ。
僕はGooglemapでここを訪れる度に何か感慨深いものを感じる。
実際に訪れるつもりは・・・無い。

余談

僕の個人楽曲として「24 Years Old」というインストの曲があるが、これはもう正に完全にInto the wildの雰囲気をイメージして作った。
正直もう聴き過ぎて自分で飽きてしまったが、唯一惜しいのは、この曲を作ったのが25歳になってからということだろうか。

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